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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)

「ところでペーパー・クリップは何に使うの?」
「ぺーぱあくりっぷ」と彼女は唄うように繰りかえした。
「ペーパー・クリップは紙をまとめるのに使うのよ。
 知ってるでしょ?どこにでもあるし、みんな使ってるわ」
 たしかにそのとおりだった。私は礼を言って本を抱え、
図書館の外に出た。ペーパー・クリップなんてどこにでもある。
千円だせば一生使うぶんくらいのペーパー・クリップが買える。
私は文房具屋に寄って千円ぶんのペーパー・クリップを買った。
そして家に帰った。


うん。
「ハードボイルド・ワンダーランド」のほうの主人公が好きだ。

「悪気はなかったんです」と男は声をふるわせて弁解した。
「これを見ていたら急に欲しくなったんでついバッグの中
 に入れちゃったんです。出来心です。許して下さい」
「許さない」と私は言った。ガスの点検員が台所のテーブル
の上にある動物の骨を見ているうちに出来心で欲しくなるなんて
いう話は聞いたことがない。