淡々と行動録を書くのも味気ないので
物語を書いてみた。



毎月の一日に物語を書くことにしよう。







1
 僕は見知らぬ子供に手を引かれるまま階段を下りた。
あたりは薄暗く、いたるところに草が生えていた。夕闇の
森の中を下っているようだった。子供は僕のほうを一度た
りとも振り向きもせずただ黙って手を引いていた。黒っぽ
い青の長袖の服を着てベージュ色のズボンを履いていた。
顔は暗くてよく見えなかった。僕はまかせるままに子供の
後をついていった。子供は早足で階段を下りていった。途
中で階段が右と左に分かれているところがあった。子供は
迷わず左の階段を下っていった。行き慣れた道を案内して
いるようだった。
 近くで鳥が鳴いていた。階段は果てしなく続くように思
われた。相当疲れているのか僕の足取りは重く、時々滑る
ことがあった。運動靴には泥がつき、ズボンが汚くなって
いた。僕は時計を見た。16時27分。なんてことのない時間
のうちのひとつだった。